第3回 理念策定のステップ
最終更新日:2026年2月17日
カテゴリ:戦略策定(マネジメントシェア)
皆さん、こんにちは。「理念策定」コラムの第3回をお届けします。
前回のコラムでは、理念の事例や再構築の必要性についてご紹介しました。
今回は、理念策定の流れやヒント(留意点)についてお伝えします。
最後までお読みいただけますと幸いです。
1.理念策定のステップ
理念の策定手法には、主に以下のようなアプローチがあります。
- 社長や経営陣のみで考えて策定する方法
- 各部門の管理者を集めて策定する方法
- 一般社員を含めて皆を巻き込んで策定する方法
策定後のフェーズ(共有や活用)を見据えますと、3つ目の皆を巻き込んで策定する方法が効果的ですので、本稿ではこの手法をベースとしたステップをご紹介します。
(図1)
- ① まずは、「現状の把握」です。
-
そもそも理念が存在しているのかどうか。存在している場合はその浸透度合いや、社員の行動に活かされているのか、現場での判断基準となっているのかといった点を確認します。
(理念が現場で活用されず形骸化している場合は、前回ご紹介した再構築が必要となります。) -
また、3C(顧客・自社・競合)分析等を用いて、会社の内部環境と外部環境を把握します。
(3C分析では、顧客・市場のニーズ、自社の強み、競合はどのように顧客に応えているのかなどを分析します。詳細は、掲載済みの「戦略策定コラム-第3回」をご参照ください。) - ② 「リーダーの決意表明」では、「この会社をどうすればもっと良くできるのか、皆で考えて実現していこう」という具合に、リーダーがメンバーに語りかけ、意識づけを行います。
- そして、「今後は、今回定めた理念のもとで経営を行っていく。理念実現に向けて様々な手を打っていく。」というトップとしての強い決意を表明します。
- ③ その後、理念策定に向けた「プロジェクトチームを発足」します。
- 各部署から一人ずつ出てきてもらったり、社歴の長い発言力のある人を巻き込んだり、新入社員やパートタイマーの人にも入ってもらうなどして、多様なメンバーで考えていきます。
- ④ 「目的や価値観についてのディスカッション」では、経営者や従業員の思い(目的や価値観など)についてヒアリングやアンケート調査を実施します。
このような形で進めていきます。
2.理念策定のヒント(留意点)
ここからは、理念を策定する際のヒント(留意点)をご紹介します。
(図2)
-
どこの企業でも成り立つような理念よりも、その企業固有のオリジナリティがある方が、求心力が高まりやすいです。
社名を入れ替えても通じるような汎用的なものは、訴求力が弱まります。 - 明快である程度シンプル。そして方向性(右に行くか左に行くか)が絞り込めるもの。
-
具体的な尺度、やるかやらないかの判断基準となるもの。
第1回のコラムでご紹介したマースペットケアの理念「ペットにとってのより良い世界。
ペットが健康で幸せに暮らすことができ喜んで受け入れられる世界を創造したい。」であれば、「ペットのためになることはする、ならないことはしない」ということになります。 - チャレンジング(意欲的)な理念であれば、社員のやる気や求心力にも繋がりやすくなります。
このようにお伝えしますと、「では結局どのような理念を作れば良いのか? どのような理念が正しいのか?」と思われるかもしれませんが、理念に正解(正しい、正しくない)はありません。
作り出した理念を本気で信じられるかどうかが重要です。
あるタバコの販売会社の例です。(*一部筆者による加工を行っています。)
その会社では、「我々はタバコを愛している、好き好きでしょうがない」といった理念を定めていました。
(実際の文言は、我々はタバコを吸う権利があるといったものなのですが、その意味合いは上記の、「我々はタバコを愛している・・・」というものでした。)
その会社の役員たちも、もちろんタバコが大好きで、役員室でも煙をふかしていました。
ある日、雑誌の記者が取材にきた際も、足を組んで煙をプカーとふかして、「何か文句があるのか」といった態度だったようです。
今の時代だと、とんでもないことのように思われるかもしれませんが、当時はこのような理念でも、求心力があったのですね。
皆が本気で好きで、信じていました。
さてこの会社では、近年この理念を、ESG(環境・社会・統治)やSDGs(持続可能な開発目標)などを意識したものに変更しました。
ところがこの結果、新しく定めた理念はどうやら不評を買ってしまった様子です。
読者の皆さんは、これは何故だと思われますか?
はっきりとは分かりませんが、(紙巻きタバコから加熱式タバコなどへと形は変えながらも、タバコを販売し続けている会社に対して、) 「本当にESGやSDGsが大事だと思っているのですか? 本当にそう思っているのですか?」といった疑念を持たれたのかもしれませんね。
「世間体を気にして掲げたのではないか」という風に顧客や従業員に受け止められた、というのが1つの理由として考えられないでしょうか。
繰り返しになりますが、大事なのは、皆が本気で信じられるかどうかです。
経営者や従業員の思い、顧客や社会のニーズを踏まえて、心の底から信じることのできる理念を考え出すことが望まれます。
3.理念の切り口
(図3)
理念というと、会社全体についてのみ定めるものと思われがちですが、そうではありません。
理念を「組織や仕事の目的・目標・価値観」と捉えると、それぞれの事業や、部課、社員に至るまで、組織のあらゆる階層に存在し得ます。
ぜひ、皆さんの組織やご自身についても、策定してみてはいかがでしょうか。
(この際には、会社全体の理念と整合性を図りつつ作成することが望ましいです。)
次回の紹介
次回は、理念の効果や活用についてお伝えしたいと思います。
次回もぜひご覧ください。
筆者プロフィール
帖地博幸
コンサルティング企業、IT企業、監査法人、学校法人にて、企業経営やITに関するコンサルティング及び研修業務に従事。
(経営基礎知識、論理的思考力、戦略策定、IT、管理会計などを主に担当。)
現在は主に、企業の理念と戦略の「共有」をテーマにコンサルティングや研修を行う。
マネジメントシェア株式会社代表取締役、中小企業診断士、理念と戦略の共有コンサルタント、後継者の軍師®
参考文献
- 後継者塾テキスト「真の企業理念」
- 軍師アカデミーテキスト「リーダーシップ」
- 戦略シナリオ[思考と技術]
-
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 2020年3月
論文:「PUT PURPOSE AT THE CORE OF YOUR STRATEGY」 -
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 2020年10月
論文:「BUILDING ONE AND ONLY BRAND THROUGH MISSION-DRIVEN MANAGEMENT」
{後継者の軍師(一般社団法人軍師アカデミー)}
{後継者の軍師(一般社団法人軍師アカデミー)}
{株式会社東洋経済新報社}
{株式会社ダイヤモンド社}
{株式会社ダイヤモンド社}